室内実験と数値実験により、回転水槽実験で得られる傾圧不安定波の非線形な振舞いを研究した。 1.室内実験 一定の水平加熱差を与える同軸円筒の回転水槽を用いて、実験流体の非線形性が重要と考えられる、軸対称流-非軸対称流間の履歴現象を調べた。回転率をゆっくり変化させて流れのパタ-ンをビデオテ-プに記録し、同一の回転率に対しても複数の流れパタ-ンが存在することを確認した。小型ディジタルレコ-ダと5個のディジタル温度センサモジュ-ルを用いて、長時間高分解能の時系列デ-タを取り、そのデ-タ解析を行った。パワ-スペクトル・クロススペクトル解析により、変動の時空間構造に違いがあることが判った。また、相関次元を計算することによりそれらの乱れのフラクタル構造を調べた。相関次元は乱れた流れを特徴付けるのに有効なパラメ-タであることが判った。 2.数値実験 境界層を充分表現できる2次元格子点モデルを作成して軸対称定常解を求め、さらに回転方向に波型をもつ微小擾乱に対する軸対称流の線形安定性を調べた。とくに次のような点に焦点を当てて系統的な実験を行った。 (1)軸対称流-波動間の遷移曲線のプラントル数依存性:他の無次元数を一定にしてプラントル数を変えることはそれに合わせて回転率を変えることであり、高プラントル数流体の場合には線形安定性に対する遠心力項の役割が重要であることが判った。 (2)軸対称流の安定性に対する境界層(摩擦/熱)の役割:物性定数を変えて安定性に対する敏感性を調べ、境界層の役割を明らかにした。
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