研究概要 |
山岬のパラメタリゼ-ションを用いたモデルにより、階層構造を持つ熱帯擾乱をシミュレ-トする目的で数値実験を行った。山岬のパラメタリゼ-ションとは、水蒸気だけでなく、雲水や雨水も予報するもので、メソ・スケ-ル対流を陽に扱うものである。さらに格子点間隔も40kmと小さく、これまでとは質の違った実験が行えた。 結果は赤道付近における対流活動が抑制され、超クラスタ-は出現しなかった。それゆえ季節内振動に伴う階層構造はうまく再現できなかった。しかしITCZは南北両半球の緯度10°付近に形成され、かつITCZを構成する擾乱は階層構造を示した。すなわち、100kmスケ-ルのメソ・スケ-ル対流があり、それらが集まって1,000kmまたはそれ以上の組織化された擾乱を形成する。また後者は全体として西進するのに対し、前者はほぼ停滞しており、この点でも階層構造の特徴を再現している。さらにこのような結果を得たことに対して、このモデル特有のいくつかの効果が重要であることも示唆された。 今後の方向としては、結果に敏感に効くと思われるパラメ-タに対して異なった値で敏感度実験をする必要がある。とりわけ静的安定度は赤道付近の活発さや擾乱の東西の移動方向に対して敏感であると考えられるので、それに関係する放射冷却に関してはより詳細な実験が必要であろう。このなかで今回は現れなかった季節内振動に伴う階層構造が出現すると思われる。
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