研究概要 |
海風前線下部(〜200m)において特徴的な渦運動及び渦の構造が音波探査装置(ソ-ダ)と超音波風速温度計を用いて調べられた。先ず,前線最下部では前線侵入前後に顕著な下降流と上昇流のペアの存在があり,前線で特有な風向の急激な時間変化をこの下降流と上昇流の大きさの比で示すことができた。さらに鉛直方向に軸をもつ渦について考えると,その渦は前線侵入前後では下降流,上昇流の影響を受けて収縮伸張し,ロ-ト状の形を持ちながらも迅速な回転運動によってそのエネルギ-を消散する。また渦の軸は前線侵入前には平均流方向に沿って前方に傾く。しかし,前線侵入後には渦の軸を平均流方向と逆方向に傾ける特徴をもつ渦がみられた。これはSimpon(1987)の室内実験の結果を考慮して,提案した地表面近くの渦のモデルを充分に裏付けている。 一方,渦運動を可視化するために実際に2m,4m,11mの3高度から煙を放出しカメラ・ビデオによる撮影を実施した。しかし,煙の放出高度や放出時間によって補捉できる渦の空間的・時間的スケ-ルが限定される。さらに観測場が高知空港に隣接することから大規模な煙の実験は制約を受ける。そこで煙が流脈線を意味することと,ホドグラフが流脈線の逆の路をたどることを考慮して,ソ-ダで得た風速の3成分(水平2成分と鉛直成分)を用いて高度200mまでの高度毎のホドグラフを1分デ-タをもとに作成した。それを立体視するための斜投象を行って,鉛直方向にくねる渦を見い出すことができた。
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