研究概要 |
南極の春,10月に出現するオゾンの異常減少であるオゾンホ-ルは,1979年に顕著になって以来,1990年10月にも史上最大の拡がりと最低オゾン量になり,依然として進行中である。 本年は,オゾンホ-ルを取り巻く,平均風の変化について調べた。1979年以降,すなわちオゾンホ-ル出現以降の月平均風について,10月を中心に,8,9,11月と4ヶ月の値を8年分について求め,変化を検討した。その結果,最近の平均風の分布は,二年程度の周期の振動を行ているが,オゾンや気温低下の如く,一方的に年々の変化があるとは云えない特徴を示していた。その標準偏差は,オゾンホ-ルの生じる極域の下部成層圏では,せいぜい5m/sであった。つまり,オゾンホ-ル出現以来,平均風の変化に著るしいものはなかった。 ところが,1970年前後5年間の平均風と比べると,オゾンホ-ルの領域では,近年は平均風が強まり,極域への熱やオゾンを輸送する大規模波動が著るしく弱くなっていることを発見した。その程度は,10m/sを越えた変化であり,波の振幅は半分程度となっていた。このことは,1979年以前に,オゾンホ-ルをもたらす風の場が出来上がっていたことを示す。気温の変化と合わせると,極域の気温が温室効果によって下がり,風が強まって,オゾンや熱の極への輸送が弱まっていった結果,1979年にオゾンホ-ルが出現したことを考えざるを得ない。 このことから,温室効果とフロンガスの増大によってオゾンホ-ルが発展しているとの仮説が,ますます根拠のある世界的にみても唯一のオゾンホ-ル生成発展の理論であることを確信した。
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