本研究は、(1)プラズマ中の電子ビ-ムアンテナによる電磁波放射の特性、(2)放射された電波の地上への伝搬問題、(3)スペ-スシャトルによる電子ビ-ム放射実験に伴う地上観測のための準備、の各ステップ順に行われた。(1)に関しては、主に文献調査を行い、次のような事が調べられた。変調電子ビ-ムによる電磁波放射の研究は開始されたばかりで、その詳細については殆ど分かっていない状況であるが、定性的にはその放射効率は、近傍プラズマのLHR周波数で最大になり、電磁波のエネルギ-は磁場と直角方向に放射する。そこで項目(2)の問題を取り扱うため、電子ビ-ムアンテナをダイボ-ルアンテナに近似出来るものとし、先ず、本年度では、フ-ルウエ-ブ計算法を利用して、大地上にアンテナがある場合の電離層中での電磁界を計算する方法を開発した。次に、電離層中にアンテナがある場合にこれを拡張し、更に信頼性のある大地上の電磁界強度を推定する。項目(3)では、実際の地上観測に備えて、金沢大学工学部建造物の屋上で、移動可能な小型ル-プアンテナ(ル-プ面積、1mx1m)を設計し、LHR(6kHz)付近の周波数のノイズレベルを測定した。商用周波数の高調波の間隙の周波数でのノイズレベルは、5.0x10^<-3>mγ1/SQR(Hz)であった。また、高調波でのノイズレベルはこれより30dB増大していた。数年後に予定されているSEPAC実験に備えるため、来年度では、ビ-ム放射による大地上の電磁界強度をより正確に推定し、今年度獲られたノイズに関する実験デ-タを踏まえて、観測機器を製作する。
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