本研究は太陽風・磁気圏プラズマの様々の局面で重要な役割を果たしていると考えられる電磁流体力学的(MHD)乱流の起源とそれ物理現象、特に粒子の加熱、加速を中心とした物理現象を理論的に調べることを目的とした。この現象に関しては、これまで、理論・観測の両面からいくつかの研究がなされてきた。しかし、多くは線型理論もしくは準線型理論に基づいており、MHD波動の振幅が平均場と同程度になるような非線型性が強い場合にはこうした取扱の妥当性自体が自明ではない。本研究では、そうした制約のない数値シミュレ-ションの手法を用い、MHD衝撃波における乱流発生機構、MHD乱流内における粒子の加熱・加速現象の研究、の二点に関し詳しい研究を行った。 1.上流側磁場と衝撃波面の法線が平行に近い準平行衝撃波において、上流側の広い範囲にわたってイオン・ビ-ム・サイクロトロン不安定によって励起された大振幅MHD波動が衝撃波面に吸収されることに伴う粒子の散乱・加熱機構が散逸の主機構となっていることを示した。また、MHD波動の成長・吸収は準周期的に起き、それに伴って衝撃波面で加熱された粒子のエネルギ-スペクトルも準周期的に揺らぐことを見いだした。これらの新たな結果は、最近衛星観測グル-プ(米国、西ドイツ)により得られた観測結果をよく説明するものである。 2.我々が先に(昭和63年度科学研究費補助金一般C62540309)、その重要性を指摘した、磁気音波とイオンの間のイオン・サイクロトロン低調波共鳴に関し磁気音波が厳密な垂直伝搬から外れ、斜め伝搬する場合の粒子加速の条件を求め、更に現実の磁気圏の条件下で、低調波共鳴が起こる条件を明らかにした。
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