主としてシクロヘキサンに一連のフッ素化ベンゼンを溶かした系でのポジトロニウム形成実験を系統的に行った。その結果からフッ素化ベンゼンの励起状態エネルギ-準位がポジトロニウム形成確率とよい相関を示すことが明らかにされた。これからポジトロンが励起状態の分子から電子を引き抜いてポジトロニウムになる過程 e^++M^〓→Ps+M^+があることが結論された。これとは別に、ヘキサフルオロベンゼンや二硫化炭素のシクロヘキサン溶液についても系統的な実験を行い、同じ結論を得た。これらの成果は今年度中に4つの論文としてまとめ、既に受理されている。 更にこれら一連の研究の結果、「Resonant Model of Positronium Formation」と名ずける新しいモデルを提起することとし、論文を投稿し査読を終えている。 これら一連の研究は主として外国人研究員の協力によって行い、その人が実験室(東海分室)に滞在することを補助する必要から、本科学研究費の経費の大半は謝金であった。この為備品として購入を予定していた光電子増倍管とレンズ系は別の経費から購入した。 本研究で生まれた「Resonant Model」に対する論文査読者の評価は極めてよく、本研究は新しいステップに入ったと言える。今後「Resonant Model」の発展に向けて研究を続ける価値がある。
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