分子科学研究所のUVSOR施設、BL3A2に設置されている気体分子の2価、3価イオン化で生じる光電子-光イオン、光イオン-光イオンの同時計測・角度分解測定システムを、光電子-光イオン-光イオンの多重同時測定(トリプルコインシデンス)ができるように改良を進めた。具体的には、イオン検出系を2系統にし、8チャンネルのマルチストップ時間-デジタル変換器したこと、またデ-タの収集と解析処理法を開発・確立するためにビデオラムを設置し、パソコンによるコインシデンススペクトルの2次元、3次元表示を行えるようなソフトを作成中である。装置は今年度中にできあがり、動作チェックを行った後に次年度前半には初期のデ-タを取得できる見込みであり、2、3価陽イオンの生成と解離のダイナミクスに関する有用なデ-タを得ることができる。 光イオン-光イオンのコインシデンス実験で特筆すべき研究結果を得ることができた。1価イオン化における電子の異方性はよく調べられており、近年イオンについても測定されはじめているが、光による直接的な2価イオン化で生成されるイオン対の異方性は今までまったく報告されていないし、理論的研究も行われていなかった。このことに関して、初めてフラグメントイオン対の生成に、解離のメカニズムと全電子状態(2価イオンと2個の放出電子)の対称性を反映した異方性が存在することを、OCSとCH_3F分子について見いだした。またこれらの分子の2価イオン化に続く解離過程について、解離チャネル、そのしきい値、電子状態と解離チャネルの相関ダイアグラム、イオン対の運動エネルギ-分布などを調べた。さらにSiF_4分子で、ダブルオ-ジェ過程が関与しているとみられる3価イオン化過程を観測したので、これらの成果をとりまとめ中である。
|