研究概要 |
分子科学研究所のUVSOR施設、BL3A2に設置されている気体分子の2価、3価イオン化で生じる光電子ー光イオン,光イオンー光イオンの同時計測・角度分解測定システムに改良を加え、光電子一光イオンー光イオンのトリプルコインシデンス測定が行なえるようにした。OCS分子についてhv=80eVで測定し、従来報告されていなかった2,3価陽イオンの解離(C^++O^++S,OC^++S^<2+>)について、そのダイナミクスに関して新しい知見を得ることができた。 光電子および光解離生成物の角度分布の測定は解離前駆体の対称性(電子状態)と寿命に関する重要な情報源である。しかし、イオン化解離の場合にはイオンと光電子の両者を含む全系の対称性を問題にしなければならないため取扱が複雑になり、1価イオン化の場合でさえ簡単な系(例えばH_2+hV→H^++H+e)を除けば研究例は極めて少ない。2価イオン化における解離で生じる正イオン対の角度分布測定をOCS,NO,CH_3Fについておこない、光イオンー光イオンコインシデンスピ-クの波形解析から異方性パラメ-タを求めた。前駆体の全対称性との比較・検討から、オ-ジェ過程によらない直接的な光2価イオン化から生じるフラグメントイオンの異方性は全対称性によって特徴づけられた解離によっていることがわかった。 1価、2価、3価イオン化が競合的に起り、その一部が非解離の親イオンとして残る場合、それぞれのイオン化断面積、解離の割合、イオン分岐比を決めることは重要であるにもかかわらずいままで行われていなかった。これらの量を結びつける表式を定め、OCSについて20ー100eVのエネルギ-領域で、1価、2価、3価光イオンの生成割合と断面積を求め、さらにこれらの親イオンの解離する割合、イオン分岐比,および断面積を決定した。運動エネルギ-分布も決定した。
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