金属ポルフィリン等大型分子系の分子構造や電子構造を高速かつ効率的に求める為にベクトル計算機を活用する方法の開発改良を行ない以下に記す研究成果を得た。 1.重なり積分、運動エネルギ-積分、原子核引力積分および電子反発積分とこれらの原子座標に関する1次微分をテ-ブル法により計算する方法を考案した(論文発表準備中)。各種分子積分の共通漸化式に現われる係数等の各因子に通番を付け、漸化式を通番のテ-ブルに簡約する。このテ-ブルは基底関数の位置や軌道因子に依存しないので同一テ-ブルを使用する多数の分子積分を同時計算できる様になる。この方法を使うと、膨大な時間を要する電子反発積分の計算がベクトル計算機において最大で約30倍の高速化が達成され、大型分子系に利用できることを確認した。 2.ポルフィリン環の様な環状部分を含む分子系の平衡分子構造をエネルギ-1次微分から安定かつ効率良く決定する方法を考案した(論文発表準備中)。非環状分子では分子固定直交座標系よりもはるかに効率良い分子内座標系による構造決定法は、環状分子では環の開裂等を引き起こして平衡構造を安定に求めることができない。両座標系を同時に使用して構造決定するのがここでの方法であり、エチレンオキシドの様な小型分子でさえも従来の方法よりも効率良く構造決定ができた。フリ-ベ-スポルフィンのフラグメント分子のいくつかについて平衡構造を安定に決定することも実際にできた。 3.擬ニュ-トンラプソン法を使用したRHF解を安定に得る解法を大型分子系に使用できる様に改良した。この為に、順不同の多数の電子反発積分を効率良く使用して順序をそろえたス-パ-行列要素を生成する方法も追加した。
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