本年度予定した以下のプログラム作成を完了した。 1.高い角運動量関数の各種分子積分とこれらの原子座標に関する1次と2次微分の求値、 2.分子内座標とxyz座標の両者を使用した多環大型分子の最適構造の効率的かつ安定な探索、 3.多数のCPHF方程式の同時解法。 1.については、通常の計算では充分な角運動量が6までの基底関数を取り扱える様にプログラムを作成した。また、これがベクトル計算機により高い高速化が達成されることを確かめた。分子積分をxyz成分に分けて取り扱えれることを考慮するとさらに高速化ができると期待される。なお、この計算の基礎になる表式を記した論文をJournal of Chemical Physicsに発表した。 2.の実施作業に多くの時間を費やした。この方法がエチレンオキシドやピリジン等の小型環状分子でも従来の方法よりも安定で効率よく最適構造を決定できることを確認した。また、これを使用してポルフィリン分子系の基本骨格であるフリ-ベ-スポルフィンの平衡構造を実際に求めた。この方法をChemical Physics Lettersに発表した。 3.については、計算上の効率を高めベクトル計算機でも高速化される様にしたが、上記の2.の実施作業に時間を費やした為大型分子においてどの程度効率良くなっているかを確認するに至らなかった。 これらの新しい方法を確立・準備できたことにより、ポルフィリン分子の様な大型分子系の理論研究を容易に実施できるなったと考える。
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