われわれはこれまで水とメタノ-ルについてそれぞれの気液界面の熱力学量と構造を分子動力学法で調べてきた。これらの系では界面付近での分子配向に特徴があることを明らかにできた。今回はメタノ-ル水溶液を調べた。 メタノ-ルについてはヨルゲンセンのTIPSポテンシャル、水は同じくTIPS4ポテンシャルを仮定した。これらのポテンシャルでは分子は変形しない。またメタノ-ルではメチル基はひとかたまりと考えている。酸素・水素原子等の上に部分電荷を置き、相互作用点を仮定している。1000個の分子を含む長方形の基本セルを用い、周囲境界条件を使った。初期配置では純粋系の場合と同様に分子の重心はフィルム状の液相を作っている。 エワルトの方法で相互作用の和をとり、ヴェルレ法で積分した。300Kの温度について、メタノ-ルのモル比が0、5、10、25、50、75、100%の場合を50ないし88psの時間範囲で分子動力学シミュレ-ション法により調べた。 まず液相部分の熱力学量(モル体積・エネルギ-等)がメタノ-ル水溶液の実験値と大きさの程度と濃度依存性が対応することを確かめた。 密度分布からメタノ-ル分子が界面付近で特に密度が高くなっているのがわかった。その他の熱力学量や分子配向の特徴を解析してこの系が最も簡単な界面活性剤のモデルとなっていることがわかった。 計算された表面張力は類似の系と同じ様な濃度依存性を持つことが明かとなった。 界面付近ではメタノ-ル分子はメチル基を気相側に向けた分子配向をとる場合が最も多い。これはメタノ-ル分子と水分子との水素結合を有利にする配向であることから理解される。
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