研究概要 |
1)1,3-ジラジカルを用いての分子内環化反応;環状1,3-ジラジカルのラジカル部位と分子内で空間的に向き合う二重結合との反応を四環性アゾ化合物の光反応を用いて検討した。空間的に向い合った、ふたつの二重結合の熱的コ-プ転位反応に相当する、ホモコ-プ転位反応をこの系において見い出した。これはジラジカルの化学における全く新しいタイプの反応である。この反応は特異的に光反応でのみ起り、熱反応では見られなかった。 2)1,3-ジラジカルを用いての小員環縮環系オキセタンの合成およびオキセタン環の特異的光化学的フラグメンテ-ション反応;オキセタン環が縮環した三環性のアゾ化合物の熱分解により、四、四、三員環縮環のひずみのかかったオキセタンを合成した。このオキセタンは、さらに高い温度の熱分解で立体選択的にシスシクロプロパンアルデヒド化合物を与えた。また上記アゾ化合の光分解では、形式的レトロ[2+4+2]反応によるフラグメンテ-ションを見い出した。本反応は熱的に生成した1,3-ジラジカルと光化学的発生によるものでは反応様式が違うというきわめて重要な知見を示すが、現在、この違いが生成する、1,3-ジラジカル種の違いによるものかどうか検討中である。 3)ビニルカルベンの分子内環化反応;エステル側鎖末端に二重結合あるいは、芳香環を持つシクロプロペンの光分解および熱分解によりビニルカルベンを生成し、分子内環化反応によるラクトンの合成を行なった。特にフェニル基を側鎖に持つ系では、選択的にフェニル基二重結合に1,2-付加するという、きわめて例の少ない反応を見い出した。生成物である三員環縮環ラクトンは、ビニルカルベンの二重結合を利用したビニルシクロプロパン-シクロペンタン転位により、三環縮環系ラクトンへの変換も可能である。
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