触媒として第4周期および第5周期VIII属のFe.Co.Ni.Ru.Rh.およびPdの金属錯体を検討した結果、第4周期のFe.Co.Niのみが触媒能を示し、中でも特にCoCl_2PPh_3触媒が好結果を与えることを見いだした。本還元系は用いる触媒、添加剤、および水素源を適切に選ぶことにより、常温、常圧、中性条件下、Zーオレフィンのみを選択的に与えることができ(下表参照)、種々の二置換アセチレンに対して一般的に適用できるので有機合成上有用である。さらに本還元系を1.6ージイン化合物に適用すると分子内CーC結合が生じ5員環化合物が獲られることを見いだした。本反応はプロトン源が存在しないとまったく反応が進行しないことから、何らかの活性な遷移金属ヒドリド反応剤が系中で生成している可能性が高い。添加物としてHMPAを入れると立体選択性の逆転が起こり、Eーオレフィンが主生成物として得られた。これは中間体と考えられるビニルラジカルあるいはビニルアニオンの熱力学的安定性を反映しているものと思われる。また、水素源として重メタノ-ルを用いるとD原子が2個取り込まれたことからもビニルアニオン中間体の存在が示唆されるが、詳しい反応機構の解明は今後の研究を待たねばならない。
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