フルオレノン、アントロンおよびジベンゾスベレノンなど縮環性芳香族ケトン類とマロノニトリルのの縮合反応において、出発物の構造の差違と反応の難易の関係を考察した。また、得られたジシアノメチレン化化合物の赤外、電子線スペクトル、^<13>C-NMRおよび還元電位を測定し、それぞれの電子状態の計算と比較して論じた。上記の化合物のなかでジシアノジベンゾ-9-ヘプタフルベンは6π電子構造の寄与が大きい。これとの関連においてキサントン、チオキサントンとそのスルホオキシドおよびアクリドンとそのN-メチル化合物とマロノニトリルを一段階で縮合させ、相当するジシアノメチレン化合物を合成する方法を確立した。得られた縮合物について、赤外および電子線スペクトルを測定して複素還の相違による6π電子構造の寄与の程度を明らかにした。とくにカルボニル基をジシアノメチレン基に変換させることによる長波長シフトは、この種複素還系色素の設計に重要な知見となることを知った。また上の一連のジシアノメチレン化合物の酸、アルカリに対する反応性を検討した。とくに濃硫酸によって、條件の強弱によるが、相当するジ-およびモノカルバモイル化合物を収率よく導くことが出きた。かつ後者の脱水反応によって、三還性複素還のモノシアノメチレン化合物を得ることに成功した。ここに得られた三還性複素還の10位に、モノ-およびジシアノメチレン基のついた化合物について、スペクトル的性質を比較して、分子の平面性を論ずると共に、酸化還元電位を比較して、電子受容体としての性質を考察した上で、アニオンラジカル、カチオンラジカルの生成の容易さに対するヘテロ置換基の影響を解明した。
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