Chiloscyphone(1〓)は苔類Chiloscyphus polyanthosから得られたセスキテルペンケトンであるが、絶対配置は決定されていなかった。光学活性体の合成によって1〓の絶対配置を決定した。3、4-ジメチル-2-シクロヘキセノンヘのビニル基の1、4-付加、ケタ-ル化、ヒドロホウ素化、Jones酸化、メチル化、アリル化、オゾン分解、分子内アルド-ル縮合により2環性ヒドリンデノン誘導体とした。接触還元とケトンの還元により得られるcis-ヒドリンダノ-ルについて(1S)-(-)-カンファニッククロリドを用いてジアステレオマ-の混合物とした。これを高速液クロ(Develosil20^φ×250mm順相系)で分取し、光学分割した。絶対配置は、このエステルをアルカリ加水分解し、さらにJones酸化して得られるcis-ヒドリンダノンのCDスペクトルより決定した。こうして得られたアルコ-ルを脱水、還元、Swern酸化、Grignard反応、Jones酸化により〓に導いた。合成した〓は〔α〕D-15.1゚(C0.4in CHCl_3)であり、天然物は〔α〕D-24.4゚(C0.76in CHCl_3)と良い一致を示したので、CDスペクトルで決定した絶対配置を有することが判明した。苔類からはchiloscypholone(2)という化合物も単離され、、1〓と関連づけられていることから、今回の合成は同時に、2〓の絶対配置をも決定することとなった。 Tamariscol(3〓)は苔類Frullania tamarisciより単離されたセスキナルペンアルコ-ルである。絶対配置は決定されていなかった。天然物からの誘導と光学活性物質の合成によって絶対配置を決定した。l-カルボンから10段階を経て得られる二環性エノンを接触還元してcis-ヒドリンダノンを得た。さらにこのものの塩基処理によって得られるtrans-ヒドリンダノンは、天然物から3段階で得られるケトン体と一致し、またCDスペクトルが逆のカ-ブになることにより、天然物はl-カルボン由来の立体化学が逆になっていることが判明した。
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