溶媒抽出試薬としての多座配位有機リン化合物として、以下の4種類のホスフィンオキサイド類が合成された。2座配位子として(Ph_2P(O)(CH_2)_nP(O)Ph_2)、テトラフェニルダイフィンダイオキサイド(TPDPDO、n=0)、ビス(ジフェニルホスフィニル)メタン(BDPPM、n=1)及びエタン(BDPPE、n=2)、三座配位子としてトリス(ジフェニルホスフィニル)メタン(TDPPM、(Ph_2P(O))_3CH)である。以上の化合物の、1.イオン対抽出試薬、2.キレ-ト抽出における協同効果試薬、としての研究が行われ、単座配位子であるトリオクチルホスフィンオキシサイド(TOPO)と比較された。 1.アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)及び二価遷移金属(Co、Ni、Cu、Zn、Cd)イオンが、過塩素酸あるいはピクリン酸イオンの存在下、BDPPM、TDPPMにより容易に有機相に抽出された。単座配位子であるTOPO、金属イオンに配位して7員環を形成するBDPPEでは、抽出率はきわめて低かった。過塩素酸を対陰イオンとするとしばしば有機相と水相の界面にイオン対が沈殿析出したが、ピクリン酸の場合には沈殿はみられず、抽出率も高かった。一般に、誘電率の大きな有機溶媒へよく抽出され、抽出種の組成がスロ-プアナリシスにより決定された。 2.1ーフェニルー3ーメチルー4ーベンゾイル又は4ートリフルオロアセチルー5ーピラゾロンによる、アルカリ土類金属及び数種の二価遷移金属イオンの抽出系における、多座配位ホスフィンオキサイド類の協同効果試薬としての性質が研究された。イオン対抽出の場合と同様に、金属イオンに配位して安定な6員環を形成するBDPPM、BDPPE、TOPOよりはるかに強力な協同効果試薬であった。付加反応の安定性、付加する中性配位子の数は、空の配位座の数、金属イオンによる空間の大きさ、中性配位子の構造などにより説明された。
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