種々のα-ヒドロキシオキシムを合成し、その金属との反応性をスポットテストにより試験した。2-ヒドロキシフェニルエチルケトンオキシム(HPEKO)がニッケル、銅、及びパラジウムに対して高い反応性を示したので、比較のため市販品クプロンと合成した一連のα-ヒドロキシオキシムをトリ酢酸セルロ-ス(TAC)に固定化した粉体を調製した。この粉体によるニッケル、銅の分離濃縮条件についてバッチ法とカラム法で検討した。TAC1gに対し0.05〜0.2gのHPEKO含有粉体を調製し、粉体中のオキシム含有量はNの含有率を元素分析により求めた結果、いずれの場合も95%以上定量的にTAC粉体中に入っていることが判った。種々のオキシム含有TAC粉体による銅、ニッケルの吸着挙動をバッチ法でPH2〜10の範囲で調べた結果、HPEKO/TAC粉体が広いPH領域で銅を吸着し、吸着した銅は0.25M塩酸溶液で脱着回収できることがわかった。 バッチ法とカラム法で海水中の銅の分離濃縮法について検討した結果、海水中の銅の濃度は2.2±0.2PPbであった。銅イオンのHPEKO/TAC粉体への吸着に及ぼす吸着温度と吸着時間についても検討し、吸着は吸熱反応でTAC粉体表面だけでなく内部まで銅イオンが拡散していることが判った(Boyd式から拡散係数を求めた結果=10^<-9>cm^2/secの値から)。また、α-ヒドロキシオキシム化合物/四塩化炭素溶液系によるニッケルと銅の抽出挙動とα-ヒドロキシオキシム化合物/TAC粉体による吸着挙動を現在比較検討中である。
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