リン酸化部位決定と機能に及ぼす影響に関して以下の研究を行なった。 (1)HTLV-I感染細胞株であるMT-2を用いて、培地に^<32>Pオルソリン酸を加えて代謝標識を行なった後p40^<tax>を免疫沈降法により回収した。この沈降物を0〜10ユニットのトリプシンで限定分解し、SDSポリアクリルアミド電気泳動で分離した結果、約15kdの分解産物に標識が移行していたことからp40^<tax>分子上の限られた領域でリン酸化を受けていることが示唆された。今後は(3)で述べるモノクロ-ナル抗体を利用して標識されたプロテア-ゼ分解産物の同定を進める計画である。 (2)HTLV-Iのプロモ-タ-の下流にクロラムフェニコ-ルアセチルトランスフェラ-ゼ遺伝子を接続したプラスミドを作製し、p40^<tax>を発現している細胞株HOS/PLにトランスフェクションすることによりトランスアクチベ-ション活性を測定できるようにした。この系にp40^<tax>のリン酸化を阻害する薬剤K252aを0〜20μMの範囲で添加した結果、トランスアクチベ-ションは0.2μM以上のK252aにより阻害されることが明らかとなり、p40^<tax>の機能発現にリン酸化が重要であることが強く示唆された。 (3)大腸菌で生産された組換えp40^<tax>でBALBICマウスを免疫しモノクロ-ナル抗体4種を得た。一方、p40^<tax>の部分欠失変異型を大腸菌で発現させ、これを抗原として各モノクロ-ナル抗体のエピト-プマッピングを行なった。現在p40^<tax>のN末端側およびC末端側を特異的に認識する抗体が同定されたので(1)で述べたペプチドマッピングに利用可能となった。今後はこれらの部分欠失変異型を哺乳類細胞で発現可能なベクタ-に導入し、トランスアクチベ-ション活性の有無を検討し、最終的にはどの特定のセリン残基のリン酸化がどのようにp40^<tax>の機能に影響するかを明らかにする予定である。
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