(1)ギャップ抽出は空中写真によって行ったが、実際に現地踏査をすると斜面方向により環境の違いが著しいため、条件をそろえないと比較ができないことがわかった。このため島の西側の尾根沿いのギャップにしぼり、これらを形成年の違いで比較することにした。 (2)金華山と牡鹿半島のモミ林の構造を比較し、ヤブムラサキ、コゴメウツギなどの低木やモミ、カヤなどの実生・若木の密度が前者で著しく低く、シカの影響が森林の構造や更新過程に強い影響を与えていること量的に把握できた。 (3)シカはススキ群落で100頭前後、シバ群落で同じく100頭前後生息することが確認された。 (4)これらの群落におけるシカは夏を中心とした成育期にはシバを多く採食するが、非成育期にはアズマネザサや枯れたススキの葉などを多く採食することが示された。 (5)シバは旺盛な再勢力により採食影響下で維持されるが、この機構を明らかにする目的でふたつの実験をおこなった。【○!1】金華山でシバ群落を柵で囲い、その反応を調べた。単葉あたりのサイズは大きくなったが、密度は低下した。現存量では枯れ葉と他種が増加したが、シバの生葉自体は変化なかった。したがってシバにとってはシカの採食は主に他種の除去というプラスの効果があることが示された。【○!2】シバのマットを 移植し、刈り取り頻度を変えてみたところ、10日、20日、30日、間隔いずれにおいても最終収量に違いはなかった。これはシバがtilleringによって次々に新葉を展開するからであり、強度の採食圧にも耐性があることが示された。
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