野外で活動中の蝶類の糖濃度選好性を調べるため、三重県津市周辺と長野県白馬地区でアゲハ類(主としてナミアゲハ)とシロチョウ類(主としてモンシロチョウとスジグロシロチョウ、モンキチョウ)の捕獲を行なった。捕獲個体は、直ちに、あらかじめ成分・濃度を数段階設定しておいた糖溶液を3分間与え、その間の吸蜜量を測定した。いずれの類でも20%糖溶液を最も多く吸飲した。しかし、その選好性は、成虫の羽化後の日令や捕獲時間帯などによって異なっていた。一般に雌の方が雄よりも多く吸飲した。また、シロチョウ類の雌の吸飲量には日周期性が認められている。一方、どの種の雄も、日令の進んだ個体では糖を全く含まない蒸留水をかなり吸飲することが分かった。 室内でナミアゲハの雌を羽化させ、濃度を数段階に設定した糖溶液をそれぞれ1日1回3分間ずつ与えて吸飲量を調べた。雌は室温で常時三角紙内に静置するか室内のケ-ジ、戸外の網室で飼育した。20%糖溶液を与えた雌の寿命が最も長くなった。また、実験に供した雌を様々な日令で解剖し、保有していた卵数を数えた。これらの雌はすべて未交尾のまま保ち、産卵をさせなかったところ、日令の進んだ雌では成熟卵の再吸収が認められた。しかし、20%糖溶液を与えた雌が成熟卵を最も多く持っていたという傾向は変わらない。なお、この時、「水」のみを与えた個体は絶食させた個体よりも寿命が延びることも分かった。しかしこれらの個体はほとんど成熟卵を作り出せなかった。 これらの結果は、野外において蝶類の吸蜜源となっている花の蜜濃度と対応していると考えられるので、平成2年度は主として花の蜜濃度の日変化や種間の差異を調べる予定である。
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