生態系・群集などのマクロな系やニュ-ラルネット等のミクロな細胞社会が構造を形成していく過程、および、出来上がった組織の特性と安定性について数理モデルを用いて究明する事をめざして、以下の研究を行った。 1。競争種が次々と侵入して群集が構成されて行く過程を拡張されたLotkaーVolterra方程式を用いてモデル化した。侵入種が新しく群集の一員となることの出来る条件、またその時、既存種の一部が侵入種との競争に破れて死滅し、群集の種構成が次々と代わって行く過程に一定の法則性があることを理論的に明かにし、また、そのプロセスの力学的安定性について議論した。さらに、上記競争系に捕食者が順次侵入して、新しい群集構造が形成される過程についても同様の解析を行い、群集構造の遷移の方向を構成種及び侵入種の特性と結び付けて説明することが可能になった。 2。熱帯の浅海海域に広くみられる珊瑚礁群集の構造成過程を構成種の空間をめくる競争にもとずくダイナミカルプロセスとしてとらえ、珊瑚の被覆率の時間変化と、さらに遷移の最終状態でみられる不変的パタ-ンとその安定性について明らかにした。 3。生物集団、細胞集団やニュ-ラル・ネットワ-クなどを多数の素子が相互に関連した多素子系と考え、そのモデル上の振舞い、特に安定パタ-ンを形成する条件、素子間の相互作用の有様について研究した。まず、各素子が2状態を取る多素子系にリヤプノフ関数が存在する条件を状態関数の差関数の間に成立する関係として定式化した。これを使ってマッカロピッツ型のニュ-ラル・ネットと一般の論理ネット(論理素子からなるネット)につて各々リアプノフ関数が存在する条件を求めた。前者についてはHopfieldらの対称条件を拡張した条件が得られ、後者についても素子間にある種の対称性があれば良いことが示された。増殖する多素子系であるLシステムについてはその再生能力、再帰的構造パタ-ン、細胞間相互作用の強弱などの関係について研究し、相互作用のあるLシステムを相互作用の無いLシステムでシミュレ-トする方法について2、3の結果を得た。
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