Uca属のarcuata(シオマネキ)をとりあげ、社会行動(攻撃行動と求愛行動)を調べた。また本種の雄の放浪個体は、なぜ定住個体に攻撃的にふるまうのかを明らかにするためのデ-タを集積した。 1:放浪開始から終了までの雄の行動を記録した。特に定住個体に対する攻撃行動、定住雌に対する求愛行動の詳細な記述、時間、場所、回数などについて調べた。定住雄で行なった同様な調査と比較して、放浪雄は他の雄とのinteractionが多く観察できたが、雌に対する求愛の機会については差がなかった。前者は放浪中に余分に加わるコスト、後者は4の結果も考慮すると、定住時の各々の穴から行なうサリ-が求愛の基本型であること(雄の求愛の型には、上記のサリ-と放浪中の求愛の2通りがある)を示すことが出来た。 2:放浪雄と定住個体のinteractionの後の後者の行動を記述した。放浪雄はinteractionの後すぐ立去る場合、放浪雄が負けた場合(対雄)、定住個体はそのまま定住を続けたが、放浪雄によるdisplacementが起こった時には、定住個体はすぐ穴を捨て放浪を始める場合と、穴から少し離れるだけで、しばらく後に元の穴に戻る場合の2通りが認められた。定住個体が雌の場合、求愛後の交尾拒否のために穴から離れたり、雌が放浪を始めた。雌の放浪は、求愛雄が定住個体の場合よりも放浪個体の場合に増加した。 3:2のdisplacementの後、放浪雄は放浪を再開するまで、相手個体の穴をしばらく利用した。このことや、放浪中に他の雄とのinteractionの回数が増すことも合わせて、上記の行動は、放浪中の体温の上昇と水分の消失に伴う生理的変化からの回復を容易にすると考えた。 4:雄の放浪は、interactionに伴うもの以外は、雌との遭遇機会の減少に伴って起こった。雌の放浪は交尾拒否によることが明らかになった。
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