共棲種の種間・種内関係をサンゴガニ類、サンゴテッポウエビ、ダルマハゼ類を用いて室内及び野外において観察・解析した。共棲種が棲んでいる群体に人工的に別個体を侵入させたところ、両者の間にさまざまな行動が観察され、それらは闘争行動となだめ行動に大別できた。闘争行動には、はさみを広げて威嚇する行動や、はさみ脚をはさみ合ったり、相手の足を引き抜く直接的な過激な行動が認められた。サンゴガニの雌は種間・種内闘争に強く、大部分の侵入者を排斥したが、その他のサンゴガニ類4種の間には明瞭な優劣関係は認められず、ある群体にまずどの種が定着するか、及びその群体のサイズが、その後の群集構造を既定する可能性が示唆された。サンゴテッポウエビやダルマハゼ類によるサンゴガニ類に対するなだめ行動が頻繁に観察された。 ハナヤサイサンゴの定期的な採集により、サンゴガニ類は年間を通じて抱卵しているグル-プと特定の期間のみ抱卵するグル-プが存在することが明らかになった。したがって新規の定着個体の存在も季節によって変化しており、種間・種内関係のパタ-ンも季節性があると予想される。 潮間帯下部に棲息しているイボハダハナヤサイサンゴについても調査した。共棲生物群集の出現パタ-ンはハナヤサイサンゴのそれとおおむね類似していたが、この種にのみ棲息しているサンゴガニの1種が得られたことは特徴的である。
|