ハナヤサイサンゴの枝間の棲息している小動物のうち、サンゴガニ類、サンゴテッポウエビ、ダルマハゼ類などはサンゴが生産する粘液やそこにトラップされる有機物を餌として利用し、またサンゴの捕食者のオニヒトデを撃退してサンゴと共生している。同様の現象はミドリイシ類を棲み家としている動物にも見られるが、別属の種類である。この小動物群集の成立過程を解明する場合、ホストのサンゴ種を選択する過程、理由も調べる必要がある。本研究ではこれら近縁の動物たちがそれぞれのホストとなるサンゴを選択する過程を実験的に解析した。プラスチック製の容器の両端に異なった種類のサンゴ(ハナヤサイサンゴとミドリイシ類)を置き、中央部にサンゴガニ類やテッポウエビ類を放してサンゴを選択させた。中央部に置く実験動物の数や種の組合せを変えて実験を繰り返した結果、1週間後の観察では多くの場合それぞれのホストであるサンゴ種を選択していたが、実験開始後3時間以内には異なった選択をする動物も多かった。小動物はまず身を隠す必要があるので最寄りのサンゴに入り込み、その後本来のホストへ移動するのであろう。この移動は夜間行われるらしい。実験に用いるサンゴのサイズも重要である。小型のサンゴ枝を用いた場合には枝の間に侵入できない個体もあるが、大型の枝を用いた場合はほとんどの場合本来のホストを選択した。資源の種類、量が群集の構造を決定している。サンゴが生産している物質が小動物を誘引している可能性があるがその実態は解明できなかった。 この3年間の結果を総合的にまとめ、この群集が成立する過程において資源量、種間関係、生活史の重要性が明確になった。
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