昨年度に引き続いて京都市内の調査地において、9種類のナラ・カシ類の種子(ドングリ)とそれに寄生する昆虫の種類、個体数および種内・種間の相互関係について調べた。この調査から、以下の事実が明らかになった。 1)樹種によってドングリの落下は特定の季節パタンを示した。また同じ樹種であっても個体によって、あるいは場所によって大きな変異が見られた。 2)ドングリあたりの生物量(乾燥重量)は、樹種によって有為に異なっていた。 3)落下時期のドングルの大きさとの間には特定の関係は見られなかった。 4)寄生昆虫の種類と寄生率はドングリ種間で異なっていた。さらに、同種であっても、個体間、場所間での変異は大きかった。 5)これまでに判明したドングリに寄生する昆虫の種類は、主に甲虫類の幼虫(シギゾウムシ、チョッキリムシ)、甲虫類の成虫(キクイムシ)、小蛾類の幼虫(ヒメハマキガ、メイガ)、膜翅目の幼虫(タマバチ)である。 6)シギゾウムシとヒメハマキガは全ての種類のドングリに寄生していたが、その他は特定のドングリに寄生する種特異的な傾向を示した。 7)シギゾウムシ、ヒメハマキガ、メイガ、チョッキリムシの幼虫の脱出時の体重は、ドングリの生量とは正の相関があったが、幼虫密度とは逆に負の相関を示した。このことは、寄生昆虫の成長にとってドングリは資源として限定されており、そのために昆虫は個体間で、資源をめぐる競争が生じている可能性を示唆している。 8)多くの場合、ドングリ内部に寄生する昆虫の空間分布は他種に対して排他的な傾向を示した。
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