研究概要 |
植物には,プリンアルカロイドとウレイドを蓄積する種があるが,プリンアルカロイドは,チャやコ-ヒ-など一部の植物にのみみられる。これらの植物におけるプリンアルカロイドの合成は,葉や花などの組織でみられるがいずれも若い組織でのみ発現し,齢が進むと合成がみられなくなる。プリンアルカロイドの発現と消失は,プリンのメチル化酵素,すなわち,キサントシンメチルトランスフェラ-ゼ,ク-メチルキサンチンメチルトランスフェラ-ゼ,テオプロミンメチルトランスフェラ-ゼの活性変動に依存している。チャ葉においては,これらの酵素は,春(4月〜6月)にのみ合成され,その後は全く見られなくなる。これらの調節は,遺伝子の発現レベルで行われていると考えられる。ウレイドは,すべての植物のプリンヌクレオチドの分解産物であり,この物質の蓄積の有無は,その組織におけるアラントインあるいはアラントイン酸分解酵素活性の大きさに依存している。アデニンヌクレオチドやグアニンヌクレオチドの分解によりリウレイドが生じるが,前者はAMPデアミナ-ゼ,後者は,5'ーヌクレオチダ-ゼ,グアノシンデアミナ-ゼの反応により分解が開始する。AMPデアミナ-ゼは,ATPが存在しないと活性がみられず,ATPは強力な活性化剤となる。GTPは,このATPによる活性化を阻害する。すなわち,細胞内のATP,GTPのレベルによりアデニンヌクレオチドの分解は,調節される。グアニンヌクレオチドの分解の調節については,今後さらに検討する必要がある。プリンアルカロイド合成素が存在する種では,プリン分解活性は低く,プリンヌクレオチドの代謝は,種により著しく異なることが示唆される。以上のように,植物におけるヌクレオチド代謝の特性と活性の調節が,主にプリンヌクレオチドに関して明らかにされたが,ピリミジンヌクレオチドについては,今後に残された。
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