研究概要 |
高等植物培養細胞の細胞周期の進行と、チュ-ブリン分子種の変動との関係を調べる為、同調培養を用い、各時期の細胞に含まれるチュ-ブリン蛋白質及びそのmRNAについて量的、質的変動を見た。 実験材料としては当初ニンジン細胞を予定していたが、この細胞はアフィディコリンに対する感受性が低い為、すでに方法の確立しているタバコBY2細胞に変更した。タバコ・チュ-ブリンもニンジン同様抗トリ脳チュ-ブリン抗体と反応し、αー、βーチュ-ブリンとも複数の分子種より成ることを確認した。同調培養によって得られた細胞周期各期の細胞抽出液の等電点電気泳動イムノブロッティングによりβーチュ-ブリンの分子種の構成を調査した結果、タバコ細胞においてβーチュ-ブリンは等電点5.25〜5.50まで少なくとも3種のアイソフォ-ムが存在し、その構成比は細胞周期の進行に従って変化し、S、G2、M期にはpI=5.30,5.32のアイソフォ-ムが主成分であるが、G1期にはpI=5.50のものが上昇した。 また、各期BY2細胞より抽出されたRNAのドットブロットハイブリダイゼ-ションの結果より、βーチュ-ブリンmRNAは細胞周期各期を通して存在し、その総含量には大きな変化はなかったが、G2期にやや減少し、M期に最大となり、G1期に再び減少する傾向が見られた これらの変化に、ある特定の遺伝子の発現が関与している可能性についてみるため、ノ-ザンブロッティングによりβーチュ-ブリンmRNAの質的変動を検討したが、何れの場合も単一のバンドとして検出され少なくともサイズの上で異なった遺伝子の発現は見られなかった。従って、これまでの結果からは、細胞周期における蛋白質レベルで見られたβーチュ-ブリンアイソフォ-ムの変動は、遺伝子の転写レベルでの変動よりも翻訳後修飾のレベルでの変動による可能性が高い。
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