研究概要 |
平成元年度当初の研究計画としては次の2点があった。1)ソラマメ(Vicia faba)に存在する分散型高度反復配列及びヘテロクロマチン成分の高度反復配列がV.faba以外のVicia属植物のゲノムにおける分布のパタ-ンを調べ、Vicia属内のゲノムの変異の様式を探る。2)タバコから単離された自己複製能を有するDNA配列(ARS)のタバコ染色体における分布を見るとともに、このARSのタバコ以外の植物ゲノムにおける分布を調べる。これらの解析によって植物染色体上の複製開始点の位置及びその共通性の有無を知る。 1)に関しては、ソラマメの分散型高度反復配列の一つであるBamHIファミリ-がVicia属の野生種においてどのような分布様式をとっているかを、カラスノエンドウ(V.angustifolia ssp,segetalis)及びスズメエンドウの(V.hirsuta)についてin situハイプリダイズ法によって解析した。その結果、少なくともカラスノエンドウゲノムにおいてはこの反復配列は分散しておらず、複数の染色体上にクラスタ-を形成して存在していることを示唆するパタ-ンが得られた。もしそうであるならば、ソラマメにおける分散型反復配列の成立過程を知る上で興味深い。現在更に解析中である。一方、2)に関しては、クロ-ン化したタバコのARSをプロ-ブにしてゲノミック・サザンを実施し、タバコ以外のいくつかの植物における相同配列の有無を検索した結果、調べた全ての種に存在することが明かとなった。このことは、植物においてDNA複製の起点として機能する配列がよく保存されていることを暗示しており、その染色体における分布様式をin situハイブリダイズ法で調べる予定である。
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