表層細胞質に存在する微小管は、細胞が正常に発生や生理現象を行ううえで、非常に重要であると考えられている。本研究では、光によりその生理現象が制御できるシダ原糸体細胞を使用し、光屈性・細胞分裂に先行して起こる細胞先端部微小管束の配向変化、およびpre-prophase band(PPB)の密度変化を経時的に解析した。 〔光屈性に伴う微小管配向変化〕赤色光下で伸長中の原糸体に、生長軸と45°または70°の角度をなす赤色偏光を照射し、偏光屈性を誘導すると、細胞の形状変化が起こる前に、微小管束の配向に変化が表われ、45°の場合は時間とともにさらに大きく変化する。一方70°の場合には1時間後にはこの微小管束は消失する。暗順応させた原糸体亜先端部の片側だけに短時間の赤色微光束を照射すると、照射側の微小管束が消失した。この微小管束の消失様式が異なるにもかかわらず、同じ様式の屈性を示すことから、微小管束そのものが重要と言うよりは、むしろ微小管束が消失または、移行することが重要と考えられる。 〔PPB形成過程〕PPBは細胞分裂に先行し、将来の細胞分裂位置に分裂前期直前から前期頃まで出現し、その後消失する。PPB形成期前後の各時期に細胞を遠心し、核の位置を100〜200μmほど移動させ、その時のPPBの形成と消失を解析した。その結果、PPBの形成には核が近傍に存在する必要があること、PPB形成後細胞を遠心し、細胞質をPPB近傍から除去すると、PPBの消失は細胞分裂後期までおさえられることが明らかとなった。 〔ディ-プエッチングによる細胞骨格の観察〕原糸体を急速凍結し、割断した後、ディ-プエッチングする方法を確率するため、種々の試みを行った。現在までのところ、方法の確立はほヾ終わったが、細胞骨格の像は見られていない。
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