1.暗所で育てたトウモロコシ矮性d_5(ジベレリン欠損突然変異)と高性正常体の中枢軸の幼葉鞘節下4mmの区域において、表皮細胞の接線方向(Ep-t)と半径方向(Ep-r)の面、及び皮層細胞の半径方向(Cor)の面について、細胞壁微小管(MT)の配向を蛍光抗体法により観察比較した。また、ジベレリン(GA)の影響も調べた。Ep-tの面では、d_5も正常体も、上部の細胞において、伸長軸にたいして直角に配向するMTが認められた。区域の下方になるほど斜めまたは縦配向となった。特にd_5においては、直角配向のMTをもつ細胞は幼葉鞘節直下の部分に限られた。他方、Ep-rの面については、正常体では区域のすべてで直角配向のみ認められたのに対し、d_5では、斜め配向もあり、区域の下の部分になるほどその頻度が高かった。Corの面については、正常体、d_5共に、区域全体にわたって直角配向のMTをもつ細胞が圧倒的に多いが、d_5ではその割合は正常体よりも少なく、特に下の部分ではそうであった。GA処理により、d_5中胚軸の伸長は促進した。それと共に、Ep-t及びEp-rの面におけるMTの配向も区域全体の細胞にわたってほぼ直角配向に変わった。Corの面については直角配向のMTのみ認められた。これらの結果は、GAがMTの配向に影響を及ぼし、細胞の伸長軸に対して直角配向のMTを増やすというこれまでの知見を支持するものである。また、トウモロコシの矮性d_5は内生GAの生産が限られているため、直角配向するMTをもつ細胞は幼葉鞘直下の区域に限られることが、矮性生長の一因となっているものと推定される。 2.同上の材料において、細胞壁のセルロ-ス・ミクロフィブリルの平均配向を偏光顕微鏡で観察比較したところ、それはMTの平均配向と一致したパタ-ンを示すことが分った。
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