ソラマメ葉の孔辺細胞プロトプラストを用いて以下の結果が得られている。 はじめに、リブロ-ス1、5ービスフォスフェイトカルボキシラ-ゼ(RuBPカルボキシラ-ゼ)活性を、最大活性が得られるとされるLorimerら(1976)の実験条件で、放射性同位元素 ^<14>CO_2を用いて測定した。その結果、140μmol/mg Chl・hの値が得られた。この時の ^<14>CO_2の取り込みは少なくとも15分間一定の値で進行し、反応液中に混入している蛋白質分解酵素などの阻害は無いものと思われる。一方、同一条件で葉肉細胞のRuBPカルボキシラ-ゼ活性は460μmol/mg・Chl hで、孔辺細胞の3倍以上であった。これらの値は抗体との反応から推定したRuBPカルボキシラ-ゼの蛋白質としての存在量とほぼ一致した。 一方、孔辺細胞、葉肉細胞プロトプラストの光合成的酸素発生速度はそれぞれ、300μmol/mg Chl・h、100μmol/mg Chl・hであった。このことは、葉肉細胞においては酸素発生により生じた還元力の大部分が光合成的炭酸ガス固定に使われることを示すが、孔辺細胞においては還元力のかなりの部分が炭酸固定以外に消費されなければならないことを示している。還元力の行方は不明であり、今後の興味ある問題として残される。 昨年度得られた結果と、本年度の結果から孔辺細胞においても光合成炭酸固定系の酵素が存在していることがほぼ確実となったが、その機能についてはまだ不明の点が多い。赤色光を照射した時の孔辺細胞プロトプラストにおける酸素発生は、光を点けてから一定の速度に達するまで約10分程度の誘導期現象を示した。これは光合成炭酸固定酵素の活性化に要する時間または光合成代謝中間体が一定のレベルに到達するに要する時間と考えられており、孔辺細胞葉緑体においても光合成炭酸固定酵素が少なくとも一部機能していることを示している。 以上の結果に基づいて、孔辺細胞葉緑体は気孔開孔時にチラコイド膜で生成したATPやNADPHのかなりの部分を細胞質に輸送し、エネルギ-の供給を行なっていると推定された。この時、孔辺細胞に存在しているRuBPカルボキシラ-ゼは、光に同期してPGAを生成し、葉緑体から細胞質へのエネルギ-の輸送を促進するものと考えられる。
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