ソラマメ葉孔辺細胞プロトプラストを材料に用いて以下の結果が得られた。 光合成炭酸固定系の最重要酵素であるリブロ-ス1、5-ビスフオスフェイトカルボキシラ-ゼ(RuBPase)は、この酵素の抗体を用いた定量、分光的方法による酵素活性の測定および放射性同位元素^<14>CO_2を用いた活性の測定により孔辺細胞葉緑体に間違い無く存在することが証明され、その活性の大きさはクロロフイル当り、葉肉細胞の約40%であった。そのほかの炭酸固定系を構成する酵素のうちホスホグルセレ-トキナ-ゼ(PGAK)、NADPーグリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素(NADPーGAPD)、トリオ-スフォスフェイトイソメラ-ゼ(TPI)、フルクト-スビスフォスタ-ゼ(FBPase)の存在が示された。れらの酵素のうちで、葉緑体で生成するATPやNADPHをPGA/DHAPシャトルを介して細胞質へ運び出すのに重要な役割を持つ酵素活性のみが孔辺細胞で高く(約4倍)、この細胞ではチラコイド膜で出来たATPやNADPHのかなりの部分を細胞質ヘ運び出すと推定された。一方、孔辺細胞、葉肉細胞プロトプラストの光合成的酸素発生はそれぞれ300、100μmol 0_2/mg Chl/hであり、RuBPase活性はそれぞれ140、460μmol CO_2/mg Chl/hであった。このことは、葉肉細胞では炭酸固定し酸素発生がほぼ1:1に進行可能であることを示すが、孔辺細胞では、光合成電子伝達系から供給される還元力のかなりの部分が炭郷酸固定以外に使われなくてはならないことを示す。さらに、孔辺細胞葉緑体の吸収する光を当てると細胞内のATP/ADPが大幅に増加することが示された。 以上の結果を総合すると、孔辺細胞葉緑体はチラコイド膜で作られた、ATPや還元当量のかなりの部分を細胞質に運び出し、細胞質や細胞膜あるいは液胞膜でおこるATPや還元当量の消費反応を支える働きを持つと推定される。
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