研究概要 |
前年に引き続き種子貯蔵タンパク質の組成を種子植物53科118種で調べた結果,101種が11Sグロブリングル-プのタンパク質を持つことがわかった.シラネアオイの抗体に加え,キンポウゲ科のヤマオダマキとケシ科のヤマブキソウの11Sグロブリンスモ-ルポリペペチド抗体を作成し,種々の植物において抗体反応量を測定することにより,定量的な解析を行った. ヤマオダマキとヤマブキソウの抗体は属内および近縁な属間で高い値を示し,この抗体の反応度は類縁関係を反映していると考えられた.シラネアオイの抗体を中心として他の2種の抗体での結果も考慮にいれ,シラネアオイの類縁を検討した.シラネアオイは従来,ヒドラスチス,ポドフイルム,ボタン属,あるいはオトギリソウ目との類縁が示唆されていた.今回の実験の結果,シラネアオイの抗体はヒドラスチスやポドフイルムに対し低い反応性を示したが,それ以外のキンポウゲ目やこれに近縁なケシ目に含まれる植物,とくにキンポウゲ科とは比較的高い反応性を示した.ボタン属に関してはその反応性は中程度であり,類縁関係についてはさらに詳しく調べる必要がある.一方,雄しべが遠心的に発生する点で近縁と考えられたオトギリソウ目の植物との反応性は低いものであった.従って,この方法ではシラネアオイはオトギリソウ目よりもキンポウゲ目やケシ目とより近縁であることが推定された.
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