テッポウユリの花粉から外壁・内壁を除去した花粉プロトプラストは、無菌培養において薄いセルロ-ス性の細胞壁を再考しながら徐々に膨らみ、約6日後には楕円体に変形した後、約8日後花粉管を発芽・伸長する。そこで本研究では、種子植物の受精のため必須の現象である花粉のこの特異的な成長様式の要因を明らかにするため、この花粉プロトプラストの培養系を用いて、発芽に至るまでの細胞骨格系の経時的変化を追跡した。細胞骨格系の一つであるアクチン繊維(AF)の観察にはロ-ダミン-ファロイジン染色を、また別の微小管(MT)の観察には間接蛍光抗体法を用いた。得られた新知見は次の通りである。 1.単離直後の花粉プロトプラストでは微細なAFやMTが多く観察されたが、その配向はいずれもランダム(網目状)であった。 2.ほぼ球形を保っている培養5日目までの細胞ではAF、MTの徐々の構築(肥厚)がみられたが、その配向はランダムであった。 3.培養5〜6日目、細胞が球形から楕円体に変形しかける頃、まず太いAFが細胞の短軸方向に配向するのがみられ、続いてMTも同方向の配向がみられた(極性の発現)。 4.培養約8日後以降楕円体から生じる花粉管の多く(約80%)は短軸方向の一部からであり、太いAFの花粉管中への流入がみられた。 以上、花粉管発芽に先立つと予想される極性の発現を形態的にとらえることができたので、これら細胞骨格系の構築変化の花粉管発芽における意義を阻害剤等を用いて詳しく調査中である。
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