前年度、花粉プロトプラストの培養において、培養開始時には無極性な配向をしているアクチン繊維ならびに微小管が、細胞壁の再生後一定の方向性をもつように配向そして構築した後花粉管を発芽・伸長することを明らかにした。そこで、本年度は、アクチン繊維や微小管の配向・構築変化の花粉管発芽における意義を細胞骨格の阻害剤を用いて調査するとともに、別に生の花粉や脱殻花粉を用いて同様の解析を行い、以下の成果を得た。 1.花粉プロトプラストを0.002%のサイトカラシンB(CB)を含む培養液中で培養すると、アクチン繊維の極性の発現は起こらず、花粉管の発芽も起こらなかった。また、極性発現後の培養6日目に添加した場合も、アクチン繊維の配向・構築が破壊され、花粉管は発芽しなかった。 2.花粉プロトプラストを0.2%のコルヒチンを含む培養液中で培養すると、微小管の一定の配向は起こらず、花粉管の発芽も阻害された。コルヒチンの添加は極性発現後でも有効であった。 3.外壁のみを除去した脱殻細胞を新たに調製し、その細胞骨格を観察したところアクチンの極性が最初からみられたが、発芽に至るまでには、さらに一定の配向・構築が必要なことがCBを用いた実験でわかった。 以上の結果より、花粉管の発芽にはアクチン繊維が非常に重要な働きをもつが、微小管も発芽に関与していることを形態学的に初めて証明することができた。 花粉プロトプラストや脱殻花粉の培養過程で起こる現象が真に正常な花粉発生過程でも起こっているかどうかを調べることが今後の課題である。
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