テッポウユリの花粉プロトプラストの培養系を用いて、花粉管発芽に至るまでの細胞骨格系(アクチン繊維、微小管)の構築変化とその意義を調査し、以下の知見を得た。 1.細胞がほぼ球形を保っている培養5日目までにアクチン繊維と微小管の徐々の構築がみられたが、それらの配向はいずれもランダムであった。 2.培養5〜6日目、細胞が球形から楕円体に変形しかける頃、まずアクチン繊維が細胞の短軸方向に配向するのがみられ、続いて微小管も同方向の配向がみられた(極性の発現)。 3.培養約8日目以降楕円体から生じる花粉管には太いアクチン繊維と微小管の流入がみられ、その方向は花粉内の両者の配向と一致していた。 4.花粉プロトプラストを0.002%のサイトカラシンBを含む培養液中で培養すると、アクチン繊維の構築、極性の発現は起こらず、花粉管の発芽も起こらなかった。また、極性発現後の培養6日目に添加した場合も、アクチン繊維の配向・構築が破壊され、花粉管は発芽しなかった。 5.花粉プロトプラストを0.2%のコルヒチンを含む培養液中で培養すると、微小管の一定の配向は起こらず、花粉管の発芽も阻害された。コルヒチンの添加は極性発現後でも有効であった。 以上の結果より、花粉管の発芽にはアクチン繊維と微小管の両者の構築ならびに一定の配向が必要であることが示された。花粉プロトプラストの培養で明らかにされた現象が真に正常な花粉発生過程でも起こっているかどうかを調べることが今後の課題である。
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