1.てっぽうゆり雌蘂柱頭より粘液が分泌され、柱頭における花粉の発芽・花粉管の伸長を助けているが、この物質中の蛋白質を精製し、東北大学農学部日向康吉教授の研究室においてマウスを用いてポリクロナ-ル抗体を作成して貫った。これをてっぽうゆり雌蘂切片に用いて光学顕微鏡・電子顕微鏡により免疫組織化学的にこれら蛋白質の所在を追跡して粘液分泌経路解明の成果を得た。またこの蛋白質は成熟組織中のみではなく、かなり若い組織中にも存在することが判明した。この結果は1991年6月23〜27日にイタリア国コモ市で行われた国際シンポジウム“angiosperm pollen and ovules"および今年開催の日本植物学会第56回大会に報告した。 2.近年花粉症の影響が喧伝されている。ここへ上記の電子顕微鏡による免疫組織化学的手法の応用を試みて一応の成果を得た。スギ花粉症は日本に於いて最も有癌率の高いものであるが、スギ花粉中の主フレルゲンであるcry jiより作製したポリクロナ-ル抗体を用いて、電子顕微鏡による免疫組織化学法により、スギ花粉内のアレルゲンの所在を送跡し、主として花粉外壁の表面付近に存在することを明らかにした。この結果は1991年10月26〜27日開催の日本花粉学会第32回大会で報告した。尚1992年7月米国オハイオ州コロンブスで開催予定の国際学会“Sexual plant reproduction"に於ても講演する予定である。
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