(1)ノンスパイキング介在神経の樹状突起への細胞内電極刺入部位をinsituで確忍する方法を確立した。ガラス管微小電極には蛍光色素ルシファ-イエロウ(3% in 1M LiCl)を充填する。生理実験終了後に色素を電気泳動的に注入する。この状態で、色素の励起光(波長430mm)を含む青色光(起高圧水銀灯よりフィルタ-で抽出)を落射照明することにより、実体解剖顕微鏡下で細胞形態と電極刺入部位を観察することが出来た。 (2)ノンスパイキング介在神経樹状突起の2次突起肥厚部での入力抵抗および時定数をステップ定電流注入実験により調べた。その結果、介在神経でのこれらの値が運動神経と較べて有意に高いことが判明した。また介在神経は-1mAまでの過分極性電流に対してはオ-ミックにふるまうが、脱分極性電流に対しては抵抗の減少を示した。このような整流作用は運動神経膜では、見られなかった。 (3)ノンスパイキング介在神経および運動神経のマルチコンパ-トメントモデルを作成し、そのシナプス活動をシミュレ-ション解析した。モデル作成には、細胞形態デ-タおよびステップ刺激に対する応答から算出された膜単位面積当たりの抵抗値を用いた。モデルの評価は、ステップ刺激に対する応答の実測値をその計算値と照合することによって行なった。最適モデルは、細胞の染色不全を形態デ-タ(樹状突起膜面積)の拡張により補正するという形で得ることが出来た。 (4)モデルでのシナプス活動シミュレ-ションの結果、ノンスパイキング介在神経樹状突起では、シナプス電位の平滑化(integration)が、運動神経と較べてより効果的に行なわれることが判明した。介在神経膜の長い時定数が、このような性質に貢献していると考えられる。一方、介在神経膜が示す整流作用がこの平滑化機能に及ぼす影響およびその機能的意義については、今後の研究が必要である。
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