昆虫血液中には、脂質輸送に携わるリポタンパク質リポホリンが存在する。リポホリンの生理機能や構造に関しては、これまでに、かなりのことが明らかになってきた。リポホリンは、分子量約60万、直径約160Åの球形をしており、内部は、中心対称的な3層からできている。表層はアポタンパク質I(分子量25万)とリン脂質の一重層からなり、内部コアに、炭化水素、両者の中間に、アポタンパク質II(分子量8.5万)とジグリセリドが存在している。そのうち、ジグリセリドや炭化水素は、その合成や貯蔵器官から、それらを必要とする組織や器官に運ばれる積み荷であり、残りの構成員は、荷車として脂質の輸送に携わり、再利用が可能である。本研究では、リポホリンの構成と機能を、さらに詳しく解析するために、アポタンパク質を単離し、そさをリポソ-ムに組み込んだ再構成リポホリンを作ることを試みた。この再構成リポホリンを用いれば各アポタンパク質の機能が明らかになると期待できるからである。 本年度は、アポタンパク質のIとIIを変性させずに単離することに成功した。これは、これまでのリポホリンそのものを用いて実験してきた立場からは、大きな前進である。現在、単離したアポタンパク質をリポリ-ムに組み込む努力をしている。それは、アポタンパク質の分離に塩酸グアニジン処理したリポホリンを用いたので、Sepharose CL-6Bカラムで分離後、塩酸グアニジンを除くことなどに問題が残っているからである。リポリ-ムそのものや、リポソ-ムに組み込んだアポタンパク質の性状を、円二色性、核磁気共鳴、電子顕微鏡などを使って検討し、アポタンパク質Iだけを組み込んだリポソ-ム、IIたけのもの、その両者を組み込んだものを調整しているところである。
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