ウニ胚の発生過程におけるアリ-ルスルファタ-ゼ(Ars)の役割を明らかにする第一段階として、胚内及び細胞内の局在性を調べた。1981年RapraegerとEpelが、生化学的手法により、ウニ胚のArs活性は細胞外基質に存在することを報告しているが、組織化学的に活性染色法により局在性を調べると、細胞外基質にArs活性はなく、反口上皮の細胞内に局在することが明らかになった。また、前述の生化学的手法によるデ-タ-は、おそらくア-ティファクトである可能性が示された。さらに、電子顕微鏡観察により、Ars活性は、細胞膜直下のリソゾ-ム様構造内に存在することが明らかになった。また、Ars活性をもつリソゾ-ム構造と卵黄顆粒が融合している像も得られたことから、おそらくArsは卵黄顆粒に存在するアリ-ル硫酸を加水分解するものと考えられた。(1990、赤坂ら)。 我々の研究室に続いて、昨年他の生物でもArsのcDNAがクロ-ニングされた。予想されるアミノ酸配列を比較したところ、よく保存されている配列が二ヶ所発見された(1990、山田ら)。おそらくこの配列が触媒中心または調節領域と考えられる。この領域に突然変異を与え、生じる活性変異を調べることにより触媒機構を明らかにし、Arsの役割解明の系口にしたいと考えている。次に、アンチセンスRNAを合成させるようなプラスミドを卵に注射し、生じる発生異常を調べる試みを行なった。転写調節領域としてArs遺伝子の上流3kbをもつCAT(リポ-タ-)遺伝子を卵に注射したところ複製を繰返し、CAT遺伝子が効率よく転写されることが明らかになった。今後は、この系を用い、ArsのアンチセンスRNAを合成するDNAを卵に注射し、生じる発生異常を調べることにより、Arsの役割を解明したいと考えている。
|