ウニ胚では、原腸形成運動が始まる直前の間充織胞胚期にアリ-ルスルファタ-ゼ活性の急激な増大が起こる。本研究は、原腸形成におけるアリ-ルスルファタ-ゼの役割を明らかにする目的で企画されたもので、2カ年度にわたる研究で以下の成果を得た。 (1)ウニ胚アリ-ルスルファタ-ゼ遺伝子をクロ-ン化し、その全塩基配列を決定した。 (2)ArsーcDNAのantiーsence RNAを用いたin situ hybridization法によって、アリ-ルスルファタ-ゼ遺伝子は原腸陥入期には反口上皮細胞でのみ発現していることを明らかにした。 (3)光学顕微鏡及び電子顕微鏡を用いたアリ-ルスルファタ-ゼの活性染色法により、アリ-ルスルファタ-ゼはウニ細胞質中のリソソ-ム内に局在することを明らかにした。卵黄物質から硫酸イオンを解放して原腸形成運動に必要な硫酸イオンを提供しているのであろう。 (4)DNAポリメラ-ゼαの阻害剤であるアフィディコリンをウニ胚に投与して発生にともなうアリ-ルスルファタ-ゼの発現を調べた結果、ウニ胚は何らかの方法でDNA複製回数を認識してアリ-ルスルファタ-ゼ遺伝子発現の時期を決めているのであろうと結論した。 上記の結果は、初期発生における最初の形態形成運動である原腸形成の分子レベルで解明に手がかりを与え、一定の貢献をしたものと考える。なお、本研究は2カ年にわたるものであり、広島大学理学部助教授赤坂甲治によって申請されたものであるが、本人が平成2年6月から米国に出張したため、協同研究者の広島大学助手山田一実が平成2年度分を引き継いだものである。
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