研究概要 |
昨年度(平成1年度)においてツメガエル受精卵における外来性DNAの発現の一般的特徴を明らかにすることができたので,今年度は発現調節に関する研究に重点を移し,以下に述べる結果を得た。1.従来からツメガエルの正常発生過程では内在性のDNAも外から注入した外来性のDNAも,胚の細胞数が約4000個の胞胚中期になるまでは発現されないと報告されていた。すなわち,受精直後に始まる卵割期の間では細胞は同調的に分裂し,しかもG_2期が細胞周期には含まれていないので,その卵割期が終ってはじめて遺伝子発現が起こるのであるという考えがひろく受け入れられていて,その遺伝子発現の開始が丁度胞胚中期に当ることから,このような変化はMBT(midblastula transition)(中期胞胚変移)と呼ばれることになっていたわけである。本研究では,外来性DNAとしてSV40ウイルスのプロモ-タ-をもつpSV2CATを用いて,そのCAT発現を発生の時期を追って調べた。この遺伝子こそはツメガエル受精卵に注入されるとMBT期に発現されるものであるとして報告されたものである。実際に注意深く調べなおすと,このようなウイルスのプロモ-タ-をもつ遺伝子の発現はすでに卵割期から起こっていることをはっきりと証明し,従来の学説の誤まりを正すことができた.また,同時に本実験ではツメガエルの筋肉のアクチン遺伝子のプロモ-タ-を含むCAT遺伝子の注入も行ない,このような発生的な調節を受けるプロモ-タ-を注入した場合,その下流の遺伝子はそのプロモ-タ-の特性に従って,神経胚期になってはじめて発現することを示した。2.上記の研究はすべて環状プラスミドを用いて行なったので,次に直鎖DNAのかたちで同じ実験を行なった。その結果,直鎖DNAでは上期のようなプロモ-タ-の特性が失なわれ,いずれも注入後間もなく、発生段階に無関係に発現されることが明らかとなった。ミュ-タントは検討中である。
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