本研究により次の成果が得られた。1.まず、ツメガエルの卵母細胞末受精卵および受精卵に注入した外来性DNAの挙動について調べ、卵母細胞では環状DNAのみ発現し、その発現はプロモ-タ-に依存しないこと、末受精卵と受精卵では発現の様態が似ているが発現のレベルが末受精卵ではひじょうに低いこと。この2つの場合では環状DNAの発現はプロモ-タ-の強さに依存しているが直鎖DNAの場合にはプロモ-タ-の存在に無関係にコンカテマ-を形成し、DNAが複製され、発現されることが明らかとなった。2.従来から、外来性遺伝子の発現開始は丁度中期胞胚(MBT)にあたる時に起こるとされてきた。ツメガエル胚発生ではこのMBTの時期に分裂が非同調となり、細胞の運動性が現われるので、その時に転写も始まるとされたのである。そこで、外来性DNAとしてPSV2CATを選んでそのCAT酵素活性の発現を調べると、その発現はすでに卵割期から起こっていることを証明し、従来の考えを正した。他方、ツメガエル筋肉のαーアクチン遺伝子のプロモ-タ-を含むCAT遺伝子の注入を行ない、この遺伝子のように神経胚で発現する性質のプロモ-タ-をもつものは卵割期には発現されず、神経胚期で発現することを明らかにした。3.以上の知見をもとに、どのオスとかけ合わせても嚢胚期に発生停止を起こす、われわれがNo65と称している母性効果ミュ-タント卵を用いる実験に移り、まず、このミュ-タント卵の特性についての検討をこなった。その結果、このミュ-タント卵では、すでに胞胚期から、発生停止に先だってRNA合成が著しく阻害されることが明らかになった。また。DNA合成については発生停止の時期まではほとんど異常がみられないという結果が得られた。これらの結果から、外来性DNAの複製は阻害されないが発現は阻害されるということが期待されるので現在検討中である。
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