サブフラグメント-1におけるエネルギ-変換機構を知るためにATP分解時の構造変化を種々のプロテア-ゼによる切断の受け方から調べた。ATPの存在下、非存在下での切断のおこり易さの程度はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動でペプチドを分離し、デンシトメトリ-によって定量化した。切断部位がどこであるかはペプチド断片のN末端のアミノ酸配列をペプチドシ-クエンサ-によって5残基ほど決め、サブフラグメント-1上のアミノ酸配列と照合して決定した。その結果、サブフラグメント1上にはATPによって切断され易さが変る部位が3カ所発見された。1つはN末端から30残基付近で、ATPが存在する時のみサティライシンとサ-モライシンによって切断が起る。第2の部位はN末端から210残基付近にある。この部位は親水性が高いので外部に突き出していると考えられ、用いたプロテア-ゼすべてによって切断された。この部位で興味深い点は、ほとんどのプロテア-ゼがATPによって抑制されたのに、この領域の中央部を切断するサ-モライシンだけは促進された事である。第3の部位はN末端から635番付近にあり、ここも種々のプロテア-ゼにより切断を受ける。この領域ではほとんどのプロテア-ゼがATPの影響を受けないがV_8とArg-CだけがATPによって抑制された。切断の抑制・促進と実際の構造変化とを対応させることは、プロテア-ゼの活性中心の構造が関係する事なので難しいが、多くの場合ATPが結合すると外に出ていたペプチドが引込み切れにくくなると解釈して良いだろう。
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