研究概要 |
無脊椎動物の視物質クロモホアとして見い出された、レチナ-ル、デヒドロレチナ-ル、3ーヒドロキシレチナ-ル、4ーヒドロキシレチナ-ルの四種レチノイドは網膜内レチノイド代謝経路の中で極めて近縁のものであるとの仮説に基づき、レチノ-ル(A_1)、デヒドロレチノ-ル(A_2)、3-ヒドロキシレチノ-ル(A_3)の三種を持つザリガンの網膜でのレチノイド代職、A_1からA_3,A_2への転換反応を調べた。 1.A_3の存在状態と温度による量的変化ー長期低温下においた動物網膜の貯蔵型エステル中にA_3は存在し、HPLC溶出パタ-ン,相対蛍光強度、UVスペクトルより11ーシス形3ーヒドロキシレチノ-ルと同定した。動物を高温条件下に移すとA_2と同じ時間経過で減少消失した。逆の場合A_2は時間と共に増加したがA_3は一定の低いレベルを維持した。これらの結果およびA_3はクロモホアとしては使われていないことから、A_3はA_14らA_2が作られる反応の中関体であると考えられた。 2.網膜レチノイド代謝酵素の性質ークロモホア生成に関与する二酵素レチニスエステル加水分解酵素とレチノ-ル脱水素酵素を持に基質特異性に注目して調べた。両酵素とも11ーシス形に強い特異性を示したが、A_1とA_2の間では基質特異性はなかった。クロモホア中の高いA_2含量は酵素の基質特異性によるものではなく、加水分解後A_1がA_2に転換される反応が推定された。 3.A_1からA_2への転換ー[ ^3H]ーレチノ-ルと網膜ホモゲネ-トをインキュベ-トは、抽出レチノイドを分取し放射能を測定した。A_2ピ-クに時間と共に増加する放射活性を認めた。A_3ピ-クは一定の低い値を維持した。 以上の結果より、A_1はA_2に転換されることが分かり、A_3はこの転換反応の中間体であることが示唆された。本研究により上記仮説の一経路、A_1→A_3→A_2については強く支持されたと考えられる。
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