胚胎期の雄において雌性生殖輸管原基(ミュラ-管)の退化を誘導する、精巣由来のホルモン様因子として知られるミュラ-管抑制物質(MIS)を、鳥類の精巣より抽出して精製し、その抗体を作製するとともに、ミュラ-管のMIS受容体の性質を調べて、発育にともなう生殖腺のMIS産生能の推移、生殖腺内のMIS産生部位、ミュラ-管におけるMIS作用部位とMISの作用機構、MISと性ステロイドホルモンとの相互作用、鳥類と哺乳類のMISおよび受容体の動物差、および、ミュラ-管抑制作用以外のMISの生理作用の追究を目的に研究した。 1.ニワトリの初生びな、および、8週齢の若鳥の精巣を細切して培養し、培養液の遠心上清中の分泌タンパク質を硫酸アンモニウムで沈澱させ、生じた沈澱物をセファデクスG25カラムで脱塩し、イオン交換クロマトグラフィ(DEAEおよびCM)、レクチン・アフィニティ・クロマトグラフィ(WGL)、および、高速液体クロマトグラフィを順次通して精製を進めた。 2.各精製段階で生じたタンパク質のピ-クを、ウズラ雌胚ミュラ-管の器官培養系を用いて生物的に検定し、MIS活性を測定すると共に、ゲル電気泳動で含有タンパク質のパタ-ンを調べた。 3.MIS感受期(孵卵7日)、MIS非感受期(孵卵12日)および、エストロゲン処理胚のミュラ-管をウズラ雌胚から集め、フェノ-ル・グアニジウム塩法でRNAを抽出し、さらにオリゴ(dT)セルロ-スのアフィニティ・クロマトグラフィでmRNAを取り出した。 4.孵卵3日に合成エストロゲンのジエチルスチルベステロ-ル投与により、ウズラ胚ミュラ-管のMIS反応性は低下し、MIS感受期が遅延することがわかった。
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