研究概要 |
ウズラはミヤマシトドに見られるような絶対的光不応(長日においておくとやがてLH分泌は低下する)を示さず、相対的光不応(長日からそれより短い光周期に移すとLH分泌が低下する)によって繁殖期が終了するとされてきたが、我々の実験室では長日から完全な短日に移してもLH分泌抑制が多くの場合起こらなかった。そこで、光条件に加えて外気温に注目して実験を行った結果(1)ウズラでは長日から短日にしただけではLH分泌は抑制されず、短日と低温が組合わさってはじめてLH分泌の抑制が起こる。ただし、集団のおよそ30%は短日にしただけでもLH分泌が抑制される。(2)低温は一定である必要はなく、一日のうち8時間だけ低温でも効果がある。また8L16Dのような完全な短日でなく12L12Dでも低温と組み合わせるとLH分泌抑制効果がある。そこで短日・低温がどのような情報に変換されてLH分泌を抑制するかを調べるために、血中のいろいろな成分の変動、ホルモンの変化を調べた。その結果、(1)短日あるいは短日・低温にしても血中のNa,K,Ca,Mg,Clなどのイオン、浸透圧は、長日のコントロ-ルと同じで、特に変化はなかった。ただし、血中遊離脂肪酸は増加していた。(2)ところが、短日にするとT4が増加し、短日・低温ではT4の増加は見られなくなるかわりにT3が増加した。 これの結果は低温がT4→T3変換を誘導していることを示唆している。イギリスのFollettは短日にするだけでLH分泌は低下するとしており、温度の影響については言及していない。しかしながら実験の前に短日に反応する個体のみを選択して以後の実験を行っているようで、このような短日のみに反応するウズラは、我々の使っている集団にも常に30%ほど存在する。この違いがどのような遺伝子背景によるかを明らかにすることは、種分化の点からも興味深いと考えられる。
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