研究概要 |
1.クロサンショウウオの雄の生殖器官の周年変化:精子形成の進行は同調的に起る。二次性徴の発現は精子形成が終った直後に始まる。精巣からの精子の流出は産卵池に入ってから起り,精子は当初,束状をなしているが,精管分泌物と混じるとバラバラになる。 2.クロサンショウウオの体型の周年変化:雄は産卵池に入ると,皮下の結合組織の膨潤と精管の水分貯溜により体重,頭幅が増し,尾高が高まる。雌の体型変化は雄に比べると小さいが,池に入ると卵嚢形成によって体重が増す。他の季節には雌雄ともに体型変化は認められぬ。 3.日本産のサンショウウオで人為的にネオテニ-を誘導できるか:エゾサンショウウオとクロサンショウウオの幼生を低温で飼育すると,成長はつづくが変態は起らない。これらの個体では脳下垂体のTSH細胞は増えつづけるが,GTH細胞は,動物が変態しない限り,分化は進まない。従ってヒノビウス属サンショウウオでは,低温飼育によってネオテニ-を誘導することは因難である。 4.トウホクサンショウウオの卵の大きさについての生殖戦略的考察:同一産卵集団内および異った性質の水域(流水,準止水,湿地)に産卵する集団間で卵の大きさを比較した。卵の大きさは流水産卵集団および一時的な湿地に産卵する集団で大であった。また各集団内での変異もかなり大きかった。卵の大きさは,その後の発育の速さ,幼生の大きさと強く関連性がある。従って、これらの変異は,本種の幼生が様々な水域で生息することを可能としている。 5.クロサンショウウオの生殖腺原基形成における体細胞の動き:電顕とオ-トラジオグラフィによる研究で明らかになったことは:原基の髄質は体腔上皮由来,髄質形成に生殖腺原基以外からの細胞侵入はない,性分化は直接的に起る,その過程で皮質と髄質の抵抗はない。
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