研究概要 |
1.クロサンショウウオの発生段階図表の作成 発生・生殖関係の研究の基礎となる発生段階図表を作成した。受精から変態完了までを73段階に区分し、それぞれのステ-ジを図示し、英文の解説をつけた。また温度と発生速度との関係をグラフで示した。一飼育例では17℃で受精から変態完了まで80日、変態した個体の平均全長は53.4mmであった。 2.クロサンショウウオの生殖腺の性分化過程の電顕的研究 従来の研究では生殖腺原基の髄質の細胞は中腎域由来とされ、皮質と髄質は拮抗的に働らき,そのバランスが崩れることによって生殖腺の性分化がおこるといわれてきた。本研究では髓質の起源は皮質と同じく体腔上皮であり,性分化の過程で皮質と髓質の拮抗な認められなかった。これは我々が先に行った無尾両生類での観察結果と同じであり,従ってこの現象は両生類一般にみられると思われる。 3.クロサンショウウオの幼若体における脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生細胞の分化と発達 TSH産生細胞の発達を免疫組織化学的に調べ,この細胞は低温飼育で変態しない動物でも同齢の変態した動物と同じく,齢と共に増加することが判った。前年度の実験結果と合せて,サンショウウオの幼生を低温で飼育すると成長はつづいても生殖腺の成熟は起らないであろうとの結論に達した。 4.クロサンショウウオの産卵時の雄の行動 本種の産卵時には雌がうんだ卵襄の周囲に雄が群れてメ-ティングボ-ルを形成するが,この察に卵襄を抱いて注精できるのは,水生型の雄であれば1匹だけである。メ-ティングボ-ルを形成している時間は7例の平均では11分弱であった。
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